アジア開発銀行(ADB)の原発支援への方針転換に関する質問主意書

エネルギー・資源
国会情報(質問主意書)
【参議院】 219回 質問: 伊勢崎賢治 回答: 高市早苗 質問日:2025/11/05 回答日:2025/11/14

3行解説

POINT
  • アジア開発銀行が原子力発電への支援方針を変えるかどうかについての質問と日本政府の答えのやりとりです。
  • 質問者は伊勢崎賢治議員で、世界銀行の原発支援解除の経緯・アジア開発銀行の方針変更の事前報告・日本政府の対応について質問しました。
  • 答弁者は内閣総理大臣 高市早苗で、各質問への事実関係説明と、現時点では日本政府の具体的対応を答えられないと述べました。

3分解説(くわしい説明)

アジア開発銀行の原発支援方針変更についての国会やりとり

伊勢崎賢治議員は、アジア開発銀行(ADB)が今まで長く守ってきた「原子力発電(原発)への支援を行わない」という方針を、見直す可能性があることを受けて、いくつかの重要な点について日本政府に質問しました。今回は、世界銀行が原発への支援禁止をやめたこととの関係や、ADBの動きへの日本政府の立場に注目しています。

質問の内容

  • 1つめは、世界銀行がなぜ原発支援の禁止をやめる決定をしたか、その経緯について日本政府が知っているかどうかを質問しました。
  • 2つめは、アジア開発銀行が原発に関連するエネルギー方針の変更をするにあたり、日本政府への事前報告があったかどうかききました。
  • 3つめは、もしアジア開発銀行の方針が実際に変わった場合、日本政府(日本は大きな出資国であり影響が大きい)がどう対応するかを問いました。

日本政府(内閣総理大臣 高市早苗)の答え

  • 世界銀行が原発支援に戻した背景については、令和7年6月10日にバンガ総裁と理事たちが話し合った結果、支援再開方針が出されたことを知っていると答えました。
  • アジア開発銀行のエネルギー政策変更案については、令和7年7月21日に日本政府の理事も含めた関係者に正式に報告されたと説明しました。
  • アジア開発銀行の原発支援方針が本当に修正されるかどうかは、これから理事会で議論される予定なので、日本政府としてどんな対応を取るか今ははっきり答えることはできないと述べました。ただし、日本のエネルギー政策と合わせて、今後適切に対応していくと考えを示しています。

つまり、今回の質疑応答で、世界の開発銀行が原発支援について再び議論し始めている中、日本政府もその動きを注視しつつ、具体的な方針決定はもう少し先になるという状況が確認できました。

この議論のAIによる評価

議論自体の評価

ChatGPTGeminiClaude
まあまあ良い議論良い議論まあまあ良い議論

議論は設問と答弁の構造が明確であり、国際的な政策変更に対する日本の立場や情報把握について問うているため、議会質問としての意義は十分にあります。しかし、質問の深度や、答弁者による具体的かつ積極的な説明がやや不足していたため、「良い議論」には達しませんでした。

国際金融機関におけるエネルギー政策の重大な転換点について、具体的な公文書(2021年のエネルギー政策と2025年の修正案草案)の文言を対比させて事実確認を行っているためです。単なる政治的な応酬ではなく、具体的な日付や機関(世界銀行とADB)の動向に基づいた質疑となっており、多額の公的資金を拠出する日本政府の関与と責任を問う内容として、建設的かつ重要な情報開示を促しています。

この議論は、国際開発金融機関の政策転換という重要な論点を扱っており、一定の価値があります。議論の強みとしては以下の点が挙げられます。質問者は、ADBの1966年設立以来の原発不支援方針の転換という歴史的変化を捉え、2021年のエネルギー政策と2025年8月15日付け修正案草案を具体的に引用して問題提起を行っています。世界銀行の2025年6月10日の決定との関連性も指摘し、国際金融機関全体の動向を視野に入れています。さらに、日本が米国と並ぶ最大出資国であり歴代総裁を輩出している事実を踏まえ、日本政府の方針を問う質問は、国益と国際責任の観点から適切です。一方で、議論の限界も見られます。質問者が指摘する「安全性・放射性廃棄物・核拡散・高コスト」の諸課題について、「いまだ解決されていない」との断定的表現を使用していますが、技術的進展や各国の対応状況についての具体的検証が不足しています。また、回答者は「現時点でお答えすることは困難」として実質的な政府方針の開示を避けており、国民への説明責任という観点では不十分です。質問が2025年11月5日、回答が11月14日と9日間で返答されている点は、事務処理としては標準的ですが、議論の深化という点では限定的でした。

質問者の評価

ChatGPTGeminiClaude
良い質問良い質問まあまあ良い質問

質問者はADBおよび世界銀行の政策変更という国際的な重要テーマについて、事実経過と日本政府の対応を明確に問うており、議会質問としての適切性が高いです。問いが抽象的過ぎず、根拠や現在までの経緯を押さえた上で質問しているため、関係省庁、専門家、市民にとっても価値があります。

質問の質が非常に高いと言えます。その理由は以下の通りです。

根拠の明確さ:2021年時点の政策と2025年の修正案を具体的に引用し、ADBの変節を論理的に指摘しています。

時事性:2025年6月の世界銀行の決定と、同年8月のADBの動きを的確に捉え、タイムリーな質疑を行っています。

核心を突く視点:日本がADBの最大出資国であり、歴代総裁を輩出しているという「責任ある立場」を背景に、政府の認識と関与を問うています。

価値の所在:この質問は、納税者、環境政策の専門家、国際政治の研究者にとって非常に価値があります。国際的な資金の流れが原子力へ向かう際の透明性を確保しようとする試みだからです。一方で、水面下で静かに方針転換を進めたい組織にとっては、議論を公にされるため価値が低い(都合が悪い)ものとなります。

伊勢崎賢治議員の質問には、いくつかの長所が認められます。
まず、問題の所在が明確です。ADBの59年間維持されてきた原発不支援方針の転換という歴史的文脈を提示し、2021年政策と2025年修正案草案を条文レベルで具体的に引用しています。これにより、政策変更の内容が読み手にも正確に理解できます。世界銀行の動向も併せて言及することで、国際開発金融機関全体のトレンドを示している点も評価できます。
質問の構成も論理的です。三つの質問は、(1)世界銀行の経緯把握、(2)日本政府への事前報告の有無、(3)日本政府の対応方針、と段階的に核心に迫る構造になっています。特に質問三は、日本が最大出資国の一つであり歴代総裁を輩出してきた事実を踏まえ、国としての責任を問う内容として適切です。
ただし、いくつかの弱点も指摘できます。「安全性・放射性廃棄物・核拡散・高コスト」の諸課題が「いまだ解決されていない」との表現は、小型モジュール炉(SMR)などの技術的進展や、各国における具体的な対応策の検証を欠いています。これは質問者の立場を示唆する表現であり、純粋に事実確認を求める質問としては中立性に疑問が残ります。また、日本政府に「どのような対応をするのか」と問うだけで、複数の選択肢や論点を提示していない点も、議論を深める上では物足りません。

回答者の評価

ChatGPTGeminiClaude
普通の答弁普通の答弁普通の答弁

答弁は事実の確認や現時点での対応困難性と政府の基本方針を説明していますが、全体的に情報提供が最小限に留まっており、具体的な検討プロセスや今後の見通しについての説明が不足しています。行政手続きとして誠実さは保たれていますが、質問者や関心を持つ国民・専門家が納得できるほどの具体性や積極性には欠けていました。

事実関係の回答については誠実ですが、政策的判断については回避的であるためです。

評価できる点:質問二に対し、2025年7月21日に事務局から理事へ報告があったという具体的な日付を回答しており、事実関係の透明性を高めています。

不十分な点:質問一の世界銀行の経緯や、質問三の日本政府としての具体的対応については、事実の伝達や「検討中」という回答に留まっており、踏み込んだ見解が示されていません。

態度の評価:揚げ足取りや礼節を欠く態度は見受けられず、閣僚として標準的な、抑制の効いた回答と言えます。

価値の所在:この回答は、報告プロセスの事実を知りたい実務家にとっては一定の価値がありますが、日本の明確なエネルギー外交戦略を期待する国民や国際社会にとっては、現状維持の域を出ないため価値は限定的です。

高市早苗内閣総理大臣の答弁は、行政府の答弁として標準的な水準にありますが、積極性には欠けています。
答弁の長所としては、事実関係の確認は正確に行われています。答弁一では、世界銀行において2025年6月10日にバンガ総裁と各理事との対話を経て原子力発電支援再開の方針が示されたことを明記しています。答弁二では、ADBのエネルギー政策修正案が2025年7月21日に日本政府代表理事を含む各理事に報告されたという時系列を明示しており、情報の透明性は確保されています。
しかし、答弁には重大な限界があります。最も重要な質問三に対して、「現時点でお答えすることは困難」として実質的な回答を回避しています。「我が国のエネルギー政策との整合性等も踏まえ、適切に対応する」という文言は、具体性を欠いた常套句に過ぎません。日本が最大出資国の一つであり歴代総裁を輩出してきた立場を考えれば、政策転換に対する基本的な評価(支持するのか懸念があるのか)や、理事会での議論の方向性程度は示すことができたはずです。
また、質問者が提起した「安全性・放射性廃棄物・核拡散・高コスト」の諸課題について、日本政府としてどう認識しているかの見解も示されていません。これは国民への説明責任という観点から不十分と言えます。
行政府として審議中の事項について予断を与えることを避ける姿勢は理解できますが、国際機関における日本の立場や方向性について、もう少し踏み込んだ説明があれば、より価値のある答弁になったと考えられます。


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