奨学金返還に係る負担軽減策に関する質問主意書

子ども・教育
国会情報(質問主意書)
【参議院】 219回 質問: 塩村あやか 回答: 木原稔 質問日:2025/10/21 回答日:2025/10/31

3行解説

POINT
  • 内容:参議院議員・塩村あやかさんが、奨学金を借りた人の返済がとても大変なので、負担を軽くする方法を政府に質問し、政府はそれに答えました。
  • 質問者(塩村あやか議員):奨学金の返済が平均330万円・15年もかかりとても重いので、返済額を税金から差し引けるようにすべきではないか、そして今の若い人の負担をどう考えているかを質問しました。
  • 答弁者(内閣総理大臣臨時代理・国務大臣 木原稔):返済額の控除は公平性や税収への影響、制度の悪用などの問題があるため、今は導入を考えていないと答えました。

3分解説(くわしい説明)

この質問主意書では、奨学金を借りた人が返すお金の負担をどう減らすかについて、参議院議員の塩村あやかさんが政府に質問しました。

● 奨学金の返済はどれくらい大変なの?

塩村さんの指摘によると、日本では大学に進むために奨学金を借りる人が半分以上おり、最近は物価の上昇もあって奨学金に頼る人が増えています。
政府の持つデータでは、

  • 奨学金の平均の借りた金額:約330万円
  • 返済にかかる平均の期間:約15年

となっています。

奨学金利用者への調査では、

  • 約7割が「返済が不安」
  • 4割以上が「返済がとても負担」

という状況で、「結婚や子育てをためらう理由になる」という声もあると紹介されています。

● 質問者(塩村あやかさん)は何を聞いたの?

塩村さんは、返済の負担が重いという人たちの声をふまえて、次のことを質問しました。

  1. 奨学金の返還が苦しいという国民の声を、政府はどう理解しているのか。
  2. 返済額を所得控除(税金を計算するとき所得から差し引く)や税額控除(直接税金から引く)にできないか。
  3. 他の税控除では公平性が問題になっても導入されているのに、なぜ奨学金の返済では公平性を理由に慎重なのか。
  4. 所得控除や税額控除にする場合、ほかにどんな問題があると考えているのか。
  5. 過去に同じような検討をしたことがあるか。
  6. 世代によって教育費負担が違うことへの対応として、やはり控除を認めるべきではないか。

● 政府(答弁者:木原稔 国務大臣)はどう答えたの?

政府の答えは次のような内容です。

① 奨学金返済が大変という声は把握している

政府は、返済額や平均返済期間のデータを把握しており、国民から「返済を軽くしてほしい」という意見が来ていると説明しました。
そして現状では、減額返還制度や返還期限の猶予などで支援していると述べています。

② 所得控除と税額控除の違い

政府は、次のように説明しました。

  • 所得控除:高い所得の人ほど、税金が安くなる効果が大きい
  • 税額控除:所得に関係なく同じ額だけ税金が減る

どちらを導入するかは、費用の性質、政策目的、税制上の公平性、財政への影響を総合的に考える必要があると述べています。

③ 奨学金返済の控除の導入には慎重

奨学金返済を控除にすることについては、政府は次の理由から慎重だと説明しました。

  • すでに返し終わった人や、そもそも奨学金を借りなかった人との公平性の問題
  • 所得控除では、低所得の人には効果が小さい
  • 税収(国のお金)が減ることで、財政への影響が大きい
  • 奨学金を「必要以上に借りる」など、制度が悪く使われる可能性

こうした理由から「今のところ導入を考えていない」と答えています。

④ 過去の検討について

政府は、2006年(平成18年度)に「第二種奨学金の利息分を税額控除にできないか」検討したことがあると明かしました。
しかしそのときも、

  • 奨学金を借りていない人との公平性
  • 効果が低所得者に小さい

という理由から導入しませんでした。
それ以降、同じような控除の検討は行っていないと答えています。

この議論のAIによる評価

議論自体の評価

ChatGPTGeminiGrok
普通の議論まあまあ良い議論まあまあ良い議論

本件は「奨学金返還の負担軽減」という社会的関心の高いテーマについて、質問者が制度の構造・公平性・税制上の課題など多面的に質問しており、論点の提示としては十分です。しかし、質問の量が多く、論点が縦横に広がるため、政府答弁は個々の質問に対して「慎重に検討」「公平性の観点」など抽象的な回答が多く、議論として深まりにくい構造になっています。質問と答弁の噛み合いが限定的であり、政策内容の具体的な進展に直結しづらい点から「普通の議論」と評価できます。

この議論は、多くの若者が直面している奨学金返還の負担という重要な社会課題をテーマにしています。質問者は、問題の背景にあるデータ(奨学金利用率の上昇、借入総額の平均額など )を示し、所得控除または税額控除という具体的な政策提言に落とし込んでおり、政策論議の土台として明確です。一方、政府答弁は、税制優遇案に対して過去の検討実績や「公平性」「財政への影響」「制度悪用の可能性」といった、政策判断における一般的な論拠を用いており、論点を整理しています。しかし、質問の一部(「世代間格差が拡大している」の意味や、他の税制優遇における公平性の認識など)について、政府が「具体的に意味するところが必ずしも明らかではない」 と回答を避けたり、質問の意図を掘り下げなかったりする箇所があり、議論の深さに欠ける側面があります。全体としては、論点設定と回答が成立しているため、「まあまあ良い議論」と評価します。

質問は国民が実際に困っている奨学金返済問題を具体的な数字と体験を交えて提起し、税制措置という具体的な解決策を提示した点で価値があります。一方、政府答弁は過去の検討歴や拒否理由を複数挙げており、完全なゼロ回答ではありませんでした。ただし、両者とも新しいデータや代替案の提示が少なく、議論が深まらなかったため「良い議論」には届かず、「まあまあ良い議論」にとどまります。

質問者の評価

ChatGPTGeminiGrok
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質問者は奨学金返還の実態データ、物価上昇、若年層の生活への影響などを用いて問題提起しており、質問内容は現実に即した社会的意義があります。また、税制の仕組み(所得控除・税額控除の違い)を問い、過去の検討事例の有無、公平性の扱い方、制度導入時の他税制措置との比較など、政策論としての必須論点を漏れなく押さえています。
一方で、質問項目が非常に多く、政策検討の前提を政府にまとめて説明させる形式になっているため、議論が広がりすぎる側面があります。特定の論点に絞るとより質が高まった可能性はありますが、それでも国会質問としては十分精緻であり「良い質問」と評価できます。

質問者は、以下の点で高い質の質問を提示しています。

  • 社会的な重要性と実態の提示:独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)のデータや労働者福祉中央協議会のアンケート結果など、具体的なデータ(例:奨学金利用率55.0%、平均借入総額344.9万円)を用いて、奨学金返還負担の深刻な実態を裏付けています。
  • 政策的な対案の提示:「所得控除または税額控除」という、政府が具体的に検討できる税制上の解決策を明確に提示しています。
  • 政府論理の掘り下げ:過去の文部科学大臣の答弁(公平性の観点 )や財務省主税局長の答弁(効果の限定性 )を引用し、政府が慎重な立場を取る理由に対する論理的な矛盾(他の税制措置との公平性の比較 )を突く構成となっており、政府の真意を引き出すための工夫が見られます。
  • 具体的な説明要求:所得控除と税額控除の「特徴や効果の違い」 や、控除適用時に考慮する「要素や基準等」 を一般論として質問することで、税制の基礎的な判断基準について政府見解を明確にしようとしています。

・大学生の奨学金利用率上昇(49.6%→55.0%)や平均借入額344.9万円など、最新の民間調査も含めて正確な数字を提示しています。
・自身の返済経験を交えつつ、感情に流されず政策提案(所得控除・税額控除)に落とし込んでいます。
・過去の大臣答弁を正確に引用し、公平性の論点について住宅ローン控除などとの比較で論理的に追及しており、議会質問として非常に丁寧かつ鋭いです。

回答者の評価

ChatGPTGeminiGrok
普通の答弁普通の答弁普通の答弁

答弁者(木原稔国務大臣)は、事実として政府が把握している奨学金返還の実態を示し、所得控除と税額控除の違いを端的に説明しており、最低限の説明責任は果たしています。また、政策として慎重な姿勢を取る理由(公平性、税収減、悪用可能性、控除効果の限定性)を列挙しており、論理構造として破綻はありません。

しかし、以下の点で議論としての深まりには限界があります。

・質問者が具体的に示した論点(世代間格差の扱い、他政策との公平性比較)に対して「意味が必ずしも明らかでない」と返答し、正面から答えていない部分が複数ある。
・公平性の概念について、質問者は「他税制措置でも問題が起きたが導入された」点を問うているが、政府は抽象的な一般論にとどめ、個別税制との比較検討を避けている。
・制度導入に向けた代替案や今後の検討可能性について踏み込まず、「現時点で考えていない」という結論を繰り返すのみであり、政策議論としては発展性が乏しい。
・質問者の提示した社会課題(返還負担が結婚出生に影響している等)について、追加的な事実確認や認識を示さず、質問者の問題提起に対する深い共感や課題認識が見えにくい。

これらの点から、答弁は形式的・一般論的であり、国会答弁として最低限のラインは満たすものの、政策議論として価値を高める回答とは言い難いため「普通の答弁」と評価します。

答弁者は、質問に対して一応の回答をしていますが、政策を前進させるための踏み込んだ回答や、質問の意図を汲み取った真摯な説明が不足している部分が見られます。

  • 論点の整理:所得控除と税額控除の違い 、控除創設時の考慮要素 、政府が把握する負担の実態(一人当たりの貸与総額約330万円、返還年数平均約15年 )など、事実情報一般的な制度論については明確に答えています。
  • 核心部分の回避:質問者の指摘した「他の政策的な税制措置」における公平性の課題について、「具体的に意味するところが必ずしも明らかではない」 として、質問の核心から距離を置く姿勢が見られます。
  • 政策決定の論拠提示:奨学金返還の税制優遇を現時点で考えていない理由として、「公平性」に加え、財政への影響制度悪用の可能性過去の検討実績とその不採用理由 など、政策を否定する際の論拠を網羅的に示しており、政府の立場を明確にしています。
  • 誰にとって価値があったか
    • 価値があった:奨学金返還の税制優遇に期待を持つ人々や、政治家が政府の反対理由(財政、悪用リスク、過去の不採用理由 )を知ることで、今後の政策提言の論点を絞り込むことができます。
    • 価値がなかった:「公平性」の論理矛盾に関する質問に対し、具体的な説明を避けられたため、その点を追及したかった質問者や、この論点に注目していた一般国民にとっては不十分な回答でした。

・質問に対して一応すべての項目に答え、過去に一度検討した事実も正直に開示しています。
・しかし、「公平性」「効果が限定的」「財政影響」「悪用のおそれ」など拒否理由が抽象的で、具体的にどの程度の税収減になるのか、悪用防止策は検討できないのかといった数値的・技術的な説明が一切ありません。
・「世代間格差が拡大している」という質問者の指摘に対しては「意味するところが明らかではない」と逃げており、真剣に受け止めた形跡がありません。
・2006年の検討で止まっているにもかかわらず、それ以降19年間まったく再検討していない点は、問題の深刻化に対して怠慢と言わざるを得ません。

以上のことから、国務大臣レベルの答弁としては具体性・説得力が不足しており「普通の答弁」に留まります。


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